自己破産した後、年金の受給はできるの?

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借金がかさんだことで返済不能になり、「自己破産」をする人が後を絶ちません。自己破産をすれば借金の返済義務は無くなりますが、一部の財産を除きすべての財産を失うことになります。

 

当然、その後は信用取引ができなくなるため、ローンと名のついた借入は一切できなくなり、クレジットカードも使えなくなります。

 

そして、特に年配の自己破産者が不安に思うのが、老後の生活の糧となる「年金」の受給ができなくなるのか、ということです。

 

自己破産したら年金の受給資格はどうなるのか?

自己破産をしたからといって、年金の受給資格を失うことはありません。それは、以下の法律によって年金の受給権が保証されているからです。

年金受給権が保証されている法律
  • 【憲法第25条】

    すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。

  • 【国民年金法第24条】

    給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。ただし、年金給付を受ける権利を別に法律で定めるところにより担保に供する場合及び老齢基礎年金又は付加年金を受ける権利を国税滞納処分(その例による処分を含む。)により差し押える場合は、この限りでない。

  • 【厚生年金保険法第41条】

    保険給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押えることができない。(以下略)

従って、年金が受給できなくなることはなく、また年金が差押えられることもありません。

 

また、今はやりのiDeCo(個人型確定拠出年金)も法律によって差押えが禁止されています。ただし、個人年金保険は年金という商品名が付いているだけで、民間の生命保険会社にお金を積み立てている自分の財産であるため、差押えの対象になります。

 

ちなみに、自己破産成立後に獲得した財産は「新得財産」となり、すべて自分の所有物となります。

 

年金の受取口座に注意!?年金引出しができなくなる?

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自己破産の場合はすべての債権者が対象になり、貸金業者だけではなく、借入があれば知人や勤務先、銀行も例外ではありません。

 

そのため、すでに年金を受給していた場合、その年金の受取口座の銀行に借金があると、自己破産の手続きの開始と同時に口座が凍結され、年金であっても口座から引出すことができなくなります。

 

年金(年金支払請求権)を差押えることはできませんが、銀行の口座に入金された時点で通常の預金(預金債権)と同じ扱いになるため、差押えることが可能になります。

 

従って、借金をしている銀行を年金の受取口座にしている場合は、自己破産の手続きの前に別の銀行に受取口座を変更しておかないと、大事な収入源を失うことになります。

 

自己破産したら年金保険料は免責されるのか?

自己破産をすると、基本的にすべての債権に対する返済義務が免責されますが、住民税や所得税などの税金や民法上の損害賠償金、交通違反の罰金などは「非免責債権」と言い、自己破産をしたとしても滞納分の納付が免除されません。

 

年金保険料も非免責債権になっており、滞納分があれば納付しなければなりませんし、納付期間が残っていれば期間満了まで納付義務が課されます。

 

自己破産をしても年金の受給資格を失うことはありませんが、年金の納付を滞納すると、強制徴収される可能性があります。